日本共産党

2002年3月12日(火)「しんぶん赤旗」

02春闘 電機、鉄鋼大手

「経営責任果たせ」

「つくった赤字」で賃下げ逆提案


 二〇〇二年春闘で、電機や鉄鋼などの大企業は無法なリストラをすすめる一方で、定期昇給の凍結や賃金カット、労働条件切り下げを次々と逆提案しています。労働者の怒りが広がっています。

法定水準へ引き下げ

 三菱電機は「大幅な業績悪化」を理由に、二十四項目に及ぶ労働条件の見直しを提案してきました。(1)三千円の定昇停止(2)時間外割増率三割を二割五分へ、休日時間外割増率四割五分を三割五分への引き下げ(3)交代制就業手当の12・5%削減、連続操業手当の30%削減(4)出向手当一律千円引き下げ(5)休業補償を法定水準である平均賃金の60%に減額―などが内容です。職場では、「こりゃひどい。むちゃくちゃな提案だ」「定昇と残業代カット分だけで一万円の賃下げになる」と衝撃が走っています。

 現在、政令で時間外勤務の割増賃金は25%増、休日勤務の割増賃金35%増で払うことになっています。三菱では、これまでかちとってきた賃金・雇用のルールを壊し、法定水準まで引き下げ、既得権をはく奪しようとしているのです。

 NECも同様の提案をしています。30%の時間外割増を25%に、45%の休日勤務を35%に引き下げるなど、労働条件見直しで約七億円を「節約」するといいます。

 賃金カットは、安川電機10%、住友重機15%、神戸製鋼が年収の5%カット。賃下げ提案のなかには、労働時間の短縮を伴い、ワークシェアリング(仕事の分かち合い)を理由に最大で20%に及ぶもの(三洋電機)もあります。

リストラ経費前倒し

 電機大手は二月下旬、いっせいに三月期決算予測を出しました。それを口実に、会社側が春闘で逆提案しているのです。

 日立が四千八百億円、松下電器四千三百八十億円、東芝二千六百億円など最終損益は大手六社だけで一兆九千二百八十億円の経常赤字に。業績が好調だった昨年から一転して、大幅「赤字」のオンパレードです。

 この大幅「赤字」には、早期退職などにあてた特別退職金加算金や工場・営業所などの統廃合のコストなどリストラ費用を含んでいます。しかも、松下、東芝、日立などは、来期に発生するものまで前倒しして計上しています。いわば「つくられた赤字」です。

 証券業界では、こうした会計処理を一気に“あか”を落としてさっぱりするという「ビッグ・バス(大きな風呂)方式」と呼んでいます。「人員削減に伴う退職割増金、工場等の閉鎖費用などリストラにかかる経費を数年先の分までまとめて赤字として計上してしまう」やり方で、「来期に『V字回復』を目指す」(「日経」二月二十五日付)ものです。「企業危機」とは無縁です。

 電機大手六社のリストラ費用は、一兆六千八百億円です。売上高から売上原価、販売費、管理費を除いた本業の利益を示す営業損益は、約七千二百億円の赤字です。

 これらはIT(情報技術)市場の成長を過大に期待した過剰投資・生産など経営路線の失敗、海外進出の事業失敗によるものです。これに、株の含み損まで入れて、「赤字」を最大限ふくらませてみせています。

高収益体制づくり

表

 大手六社がため込んだ内部留保は、十二兆八千三百億円もの巨額に達しています。昨年、内部留保をとり崩したNECと富士通を除く四社は、一年間で七千四百十九億円を積み増ししています。

 労資の交渉で、「企業再生できるかの瀬戸際」(NEC)、「操業以来最大の危機」(東芝)、「一段突き抜けた、まさに異常な状況」(松下電器)と会社側が主張し、組合側の要求をはねつけましたが、この主張がごまかしであることは明らかです。

 これら電機の大企業は「社内に余剰人員がいる」などと、こぞって一万数千人、二万人と大規模な人員削減を進行中です。大手六社で今後、国内だけで九万三千七百人余もの大量人減らしを当然のものとして、会計処理をしています。

 今回の逆提案は、工場閉鎖や分社化、正規雇用をパート・派遣などの不安定雇用への置き換えに加え、正規雇用の労働者の賃金ダウンをはかり、労働条件を労働基準法最低水準まで引き下げて、高収益体制をつくろうというものです。

組合に300項目の意見

 経営側の手前勝手な逆提案に対し、職場に変化が起きています。労働組合が組合員の質問や意見、要望など生の声を機関紙に掲載しています。

 安川電機労組では「10%の賃金カットを受け入れる場合は、会社幹部の責任を追及してほしい」「なぜこの時期に出したのだろう。まるで春闘をけん制し、賃金カットと春闘での定昇抑制、一時金抑制を両方ねらっている」など三百項目もの意見が寄せられています。

 会社の子会社解散・外注化を迫られている東芝労組支部でも「経営陣の無策や失敗のつけを拠点の移動で技術者に負わせるのはおかしい」「地元住民の雇用、経済確保のために子会社をたちあげたのに、短期間で解散するのは勝手すぎる」「終結後、処分するステップ、一斉リストラを感じる」と百七十項目に及ぶ意見を集約しています。

 大企業職場で活動する日本共産党支部は、つくられた「赤字論」をもとにしたリストラ・賃下げ攻撃に反撃しています。

 日本共産党三菱電機伊丹委員会は四日、職場新聞「羅針盤」三月号外を門前で配布しました。

 このなかで、会社側の逆提案に対し、三菱電機労働組合(電機連合)が「長い労使関係のなかで例のない内容も含めた提案」「会社に対する信頼感を損ねる懸念のある項目も含まれており、慎重にならざるをえない」「組合員がもつ疑問に最大限に答えていく」とのべていることを紹介。「会社は職場の疑問に答えよ」「強行することをやめ、労働者の納得と合意を得よ」の声をあげよう、「職場の団結を強め、労組中央交渉団を激励し、たたかいぬこう」とよびかけています。

 


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