日本共産党

2002年1月27日(日)「しんぶん赤旗」

後発品を積極的に使ったら

薬代23%減りました

長崎の開業医 本田孝也さんの実践

“医療費抑え質向上”


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 開業医らでつくる長崎県保険医協会は、安全な医療と患者負担の軽減をめざして、同じ薬効の医薬品を高価な先発品から安価な後発品(ジェネリック医薬品)に切りかえるとりくみを始めています。同常任理事の本田孝也さん(45)は、昨年6月に自分の医院の医薬品を整理し、薬剤費を4分の1近く減らし、注目されています。

 本田さんは、扱っている医薬品三百二十品目のうち五十五品目を後発品に切りかえ、効能が重複する薬や効果に疑問のある新薬など六十品目の使用を中止しました。その結果、後発品の使用割合は変更前の12%から31%に。各健康保険への薬剤請求費が、去年一月から五月までの平均額二百八十七万円から、七月は二百二十万円になり、約七十万円も減少しました。23%の減。患者負担も同じ割合で軽くなりました。

 本田さんは、「医療の質を向上させたくて、医薬品を整理しました。薬効の重複する薬や効果が不確かな新薬をやめたり、国際的に評価の定まったジェネリックの割合を高めました。結果として薬剤費の削減ができた」といいます。

 無効であったり、副作用を引き起こす有害な物質でも「新薬」として高い薬価がつけられ投与される問題が指摘されています。本田さんの実践は薬害の防止にもなり、薬剤費も節減できることを示しています。

 「医師として、医薬品を自らスリム化して国民に信頼され、政府の医療改革にものをいっていきたい」と本田さんは力をこめます。

 切りかえ可能な医薬品を先発品から後発品に切りかえた場合、後発品メーカーでつくる医薬工業協議会と全国薬業労働者連絡会議はそれぞれ、全国で医療保険財政が約一兆円削減できると試算しています。

保団連が後発品共同購入運動へ

 全国の六割の開業医(医科・歯科)が加盟している全国保険医団体連合会は、小泉医療改悪に反対し、患者を医療から遠ざけないために後発品の共同購入の運動を二月から全国で始めます。


良質 安全 安価

評価定まった薬 後発品

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「医療の質を向上させるために医薬品を整理した」と語る本田孝也さん=長崎市、本田医院の診察室

 同じ効き目ならば高価な医薬品(先発品)を安価な後発品(ジェネリック医薬品)に切りかえることで、薬剤費を減らせる――。1面所報のように後発品を集団的に検討し、積極的に使っている長崎市の開業医、本田孝也さん(45)の実践を紹介します。(海老名広信記者)

豪州基準で見直すと…

 本田さんは、全国保険医団体連合会が普及している、オーストラリアの「治療ガイドライン」にそって、医薬品を見直しました。

 オーストラリアには製薬会社がなく、日本のように大手製薬会社が毎日、新薬のきれいなパンフレットをもって医師に売り込みにくることはありません。医薬品は、国際基準からみて評価の定まった良質で安全なものを使用しています。日本ではそれが後発品というわけです。

 ところが、「日本の医師の大半が医療の質を落としたくないと思って新薬や先発品を使っている」と本田さんは指摘します。

保険請求と患者負担を減らした事例
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 医学生のころから新薬や先発品しか使わず、医師になってからも連日、大手製薬会社の売り込み攻勢にさらされる。一方で中小企業で宣伝力のない後発品の情報はまったく入らない。「大手の薬はいいという考えが医者に染み込んでいる。ここに日本でジェネリック(後発品)が普及しない大きな原因がある」と本田さんはいいます。

 本田さんは、自らの実践例を各地で話しています。医師などからの疑問に答えてきました。

 多いのが品質に関する不安。「厚労省の各種基準を合格し、工場施設も大手と同等以上で問題ありません。“安かろう悪かろう”は過去のイメージ」といいます。

 「成分は同じでも、添加物やカプセルの材質などに問題はないか」という質問には、「添加物で問題がおきた事例はありません。むしろ、後発のほうがカプセルの材質など使いやすく工夫している例がある」。

流通基盤は弱いけれど

 副作用が出た場合、中小企業の後発品メーカーが対応できるか、という疑問もよく聞かれます。本田さんも後発品に切りかえて副作用を疑う症例を経験しました。先発、後発双方のメーカーに連絡すると、その日の夕方には両者から、その薬による過去の副作用例が示されたといいます。

 「大手に劣らず、スムーズに処理は行われました。結局、副作用が原因ではありませんでしたが、二十四時間以内に厚労省はもちろん、アメリカのFDA(食品医薬品局)まで報告がいっていました」

 また、後発品は流通基盤が弱く使いにくいという声も聞きます。「確かに大手は、朝に注文すれば少量でも夕方にはもってくる。ジェネリックは入荷に二週間もかかるものもある。しかし、きちんと在庫管理すれば、まったく問題ありません」

 日本で後発品が普及しないのは制度の不備もあります。医師が先発品を処方しても、薬局で患者が希望すれば薬剤師が後発品を調剤できる代替調剤権の制度など、日本には後発品使用を誘導する施策がないことも指摘します。

 


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