日本共産党

2002年1月26日(土)「しんぶん赤旗」

中央アジア諸国

駐留長期化はかる米軍

反テロ環境整備口実に 周辺国は警戒


 昨年末にアフガニスタンで暫定政権が発足し、米国の「反テロ戦争」が新局面を迎えた今も、旧ソ連中央アジア諸国に展開する米軍の動きが活発です。米軍幹部や米有力政治家が中央アジア諸国を次々訪問し、資源をめぐる地域戦略もからんで、事実上の駐留の長期化を狙っています。(モスクワで北條伸矢)


次つぎと訪問の軍幹部や政治家

 対アフガン作戦を指揮するフランクス米中央軍司令官は二十一日、ウズベキスタンの首都タシケントを訪問、カリモフ大統領らと会談しました。米同時多発テロ事件以来、同司令官のウズベク訪問は五回目です。

 公式には、アフガン暫定政権への支援問題が議題になったとされます。しかし、ロシアの有力紙コメルサント二十三日付によると、同司令官はグリャモフ国防相との会談で、米軍のウズベク駐留期間の延長を公然と提案。駐留延長と引き換えに、経済支援、「反テロ同盟国」としての地位の確保、ウズベク国内の人権問題に寛容な態度をとることなどを提示したといいます。

 フランクス司令官は二十三日にはキルギスを訪問、首都ビシケクで「中央アジアに恒常的な基地をつくるつもりはない」としつつも「テロとのたたかいではここに必要な環境を整えなければならない」「必要な場合には各国指導部と協議する」とし、米軍駐留の長期化を主張しています。

 また、ウズベクを訪問した米民主党のダシェル上院院内総務は十八日、ウズベクを含む中央アジア諸国への米軍駐留は「長期的な性格を持つ」「この点ではすでに、各国首脳と必要な水準で信頼関係がある」と言明。同氏ら上院代表団は、キルギス、トルクメニスタンにも足を運びました。

豊富な石油資源ねらう米の戦略

 中央アジア諸国では現在、ウズベク三基地、タジキスタン二基地、キルギス一基地がアフガニスタンでの“戦争”に協力するために駐留米軍に提供されています。カザフスタンも基地供与を言明しています。他方、中央アジアに駐留するロシア軍はタジクにいる機械化狙撃師団(約一万人)だけです。

 ロシアは米軍駐留長期化の動きに警戒感を隠していないものの、「反テロ」で米国と協調路線を取っている手前、表立った批判は控えています。それでも、タジク・アフガン国境の警備を担当するロシア国境警備局のトツキー長官は二十二日、「アフガンでの作戦が終了したら、米兵はただちに帰国すべきだ」と強調。一方で、ロシア国境警備隊の駐留は「最低十―十五年は延長する」と語りました。

 英紙ガーディアン二十日付(電子版)は、この地域をめぐって十九世紀に繰り広げられた英ロ両国の「大争奪戦」と比較しながら、米軍の駐留長期化の動きが石油・天然ガス資源を狙う米国の中央アジア戦略と密接に結びついていると指摘しました。

 米国務省によると、カスピ海周辺に眠る石油資源は推定で二千億バレルで、ペルシャ湾に次ぎ世界第二位。カザフは石油埋蔵量で世界第三位です。トルクメニスタンの天然ガス埋蔵量も世界第四位といわれます。

 米国の攻勢は今に始まったことではありません。二〇〇〇年には、米国の強力なてこ入れもあり、ロシアを経由せずに地中海沿岸のトルコ領ジェイハンに至るパイプラインの敷設が決まりました。さらに、トルクメニスタンの天然ガスをアフガン経由でインド洋に運ぶルートが九〇年代から計画されています。アフガン情勢の変化に伴い、このルートの開拓に注目が集まっています。

大企業の利害と密接な結びつき

 いずれにせよ、対アフガン作戦開始後、わずか三カ月あまりで、テロ対策を口実にブッシュ政権は中央アジア諸国へ急接近し、とくに軍事的足がかりを強めつつあります。コメルサント紙は「米国の軍事プレゼンスは、米国の大企業の利害と密接に結びついている」と論評。ソ連時代から続いていたロシアの影響力が急速に弱まりつつあると指摘する一方で、米国の軍事的プレゼンスが急速に拡大していることを指摘しています。

 受け入れる側の中央アジア各国では、経済効果目当てに米軍の駐留長期化に期待する動きもあります。しかし、米軍の存在が自国内のイスラム武装勢力を刺激したり、対ロシア関係の複雑化につながる恐れもあります。国境を接する中国も警戒心を隠していません。

 タジク在住のジャーナリスト、バハティヨルさんは「経済効果は一時的、限定的なもの。いずれ、国民もそのことに気づくはずだ」と語りました。


ウズベク過激派も対テロ攻撃の標的

米中央軍司令官 

 【タシケント24日ロイター】対アフガニスタン軍事作戦を指揮するフランクス米中央軍司令官は二十四日、訪問先のウズベキスタンの首都タシケントで、「タリバンと同盟するウズベキスタン・イスラム運動(IMU)は組織を壊滅させるべきであるというワシントンのリストにあり、この残存組織を破壊する努力をつづけていく」と語りました。

 IMUはウズベキスタンのカリモフ大統領が同大統領の暗殺をねらっていると主張する組織。同司令官はタリバンを「ほとんど壊滅させたものの」、米軍は軍事行動を続け、情報を収集していると強調しました。

 またフランクス司令官は旧ソ連中央アジア三国での米軍駐留が「われわれの必要に応じたもので、われわれは(中央アジア諸国からの)支援が継続されることを期待する」と表明しました。

 


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