日本共産党

2002年1月26日(土)「しんぶん赤旗」

小泉「改革」どうみる

エコノミスト 紺谷典子さんに聞く

政府は営利企業ではない

"採算、効率"はおかしい


 「構造改革なくして景気回復なし」などと威勢のいい言葉を散りばめて推し進める小泉純一郎首相の「改革」とは、いったい何なのか――日本証券経済研究所主任研究員で、エコノミストの紺谷典子さんに聞きました。

 聞き手・伊藤紀夫記者
 写 真・田中秀和記者


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外国資本のための「改革」

 「改革」といわれると、良いことだと思ってしまうが、「改革」と称しておこなうことが本当に国民にとって良いことなのか、だれのための「改革」なのかが問題です。

 小泉首相の「改革」も、橋本元首相の「改革」も非常によく似ています。一つは、緊縮財政・増税路線、財務省のための「改革」です。もう一つは、たとえば、「不良債権の処理を急げ」などというアメリカをはじめとする外国資本のための「改革」です。国民のための「改革」という点では疑問をもたざるをえません。

 たとえば、小泉首相が打ち上げている郵政事業の民営化は、銀行や企業にとってはビジネスチャンスかもしれませんが、民営化した国々では、過疎地の郵便局や金融サービスがなくなったり、小口客を大事にしなくなったりの問題が生まれています。私企業にまかせてしまって、それで国民が必要とする公的サービスが保証されるでしょうか。

 小泉首相の財政構造改革は、たんなる緊縮財政で、構造改革になっていません。国民生活の健全性を犠牲にしてまで、財政だけ健全化してどうするのでしょう。

 必要な社会資本整備は粛々とやるべきです。肝心なのは、それが国民にとって必要かどうかの選別です。いつかやらなければならない社会資本整備を前倒しでやるんだったら、将来の財政支出が減りますから、借金は返せます。もちろん、むだな公共事業にはどんどんメスをいれるべきです。

「一両損」ならやらないで

 医療保険改革については、「三方一両損」というなら、なぜやるのか、「三方一両得」ならぜひ、やってほしいけれど。「一両損」ならやらないでほしい。

 橋本内閣の厚生大臣として、健康保険の本人負担一割を二割にし、高齢者の自己負担を増やしたのは、小泉さん本人です。「赤旗」の記事の通りだと、この改悪によって三十五万人もの患者が減り、病院にいくのをあきらめたということです。

 医療費の抑制こそ考えるべきです。高薬価で「薬漬け」の一方、医師の技術料が正当に評価されていない。だから、診療報酬を下げればいいというものではありません。医師の技術料や予防医療を評価することで、よい医療を促進することも可能です。

 そういうことをいっさいしないで、ただただ、国民の負担を増やしただけというのが、小泉厚生大臣の医療保険改革でした。本当の改革をしなかったからこそ、ほんの数年で二割から三割に増やそうとしており、自己負担は以前の三倍です。これのどこが「改革」なんですか。

 小泉内閣がすすめる「不良債権の早期最終処理」には大反対です。不良債権の処理は九九年夏には、その七割の処理が終わっています。以後、一進一退なのは処理しても、不況のためにまた増えるからです。

 「民にできることは民に」という小泉さんが、政府が強制して、無理やり引き当てを積ませて不良債権処理を急がせるというのは、どうしたことか。信金、信組は小さい企業に貸している分だけ不良債権の比率が高いので、政府が処理を強制すれば、融資を引きあげざるをえない。

 不良債権が不況の原因というのは間違いで、景気が悪いから、不良債権が減らないんです。融資を引きあげたら、新たな倒産・失業が生じ、ただでさえ需要不足の経済をさらに冷え込ませ、新たな不良債権を生むという悪循環になるだけです。完全に政策を誤っています。

 効率が悪い、だめな企業をつぶすのが経済再生の道だという小泉政権の方針にも一言いいたい。

国民のための仕事が役割

 今回の不況は日本発の金融恐慌かといわれるくらい深刻なデフレで、普通の不況だったら、十分に生き延びていけるはずの企業がみんなまいってしまっている。そういう状況で企業を選別することが日本経済を強くすることになるでしょうか。赤字企業が無能だったり、さぼっているとは限りません。長い不況で体力を失い、資本力の勝負で敗退しているのです。

 政府が採算とか、効率ばかりをいうのは、本当におかしい。政府は営利企業ではありません。採算はとれないが、国民のために必要な仕事をするのが政府の役割だということを小泉政権はわかっていません。何もかも民にまかせて良いなら、政府もいらない、小泉首相もいらないということになります。

 民間が節約・リストラの努力をすればするほど経済は縮小する悪循環に入っています。いまこそ、政府の出番です。景気を良くし、国民生活を安定させるために、政府が公的な役割を果たすべきときです。


 こんや・ふみこ 1944年東京都生まれ。早稲田大学卒。現在、日本証券経済研究所主任研究員。エコノミスト。国際基督教大学、上智大学、お茶の水女子大学などの非常勤講師を歴任。テレビでも経済問題をわかりやすく語り、活躍している。

 


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