日本共産党

2002年1月24日(木)「しんぶん赤旗」

タイヤ脱落次々明るみに

三菱車事故 本紙の連続追及で

横浜・母子直撃の悲劇どこでも…


 排気量二万二〇〇〇cc、四四〇馬力――とてつもなく大きな鉄の固まり、大型トレーラーをけん引するトラクター。その前輪が突然外れて勝手に走り出し、四歳と一歳の子ども連れの主婦(29)の背中を直撃。主婦の命を奪いました。なぜこんな事故がと思い、取材を始めると、驚いたことに同種事故が次々に明らかになりました。(遠藤寿人記者)


小学生の列

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タイヤ脱落事故が相次いで発生していたことを報じた、本紙1面の掲載記事

 事故が起きたのは今月十日、神奈川県横浜市瀬谷区下瀬谷三丁目の県道です。左右二車線の直線道路で、コンテナを積んだ大型トレーラーや、くず鉄などを満載したトラックが頻繁に往来しています。道路横には「人身事故を目撃した方はご連絡ください」と目撃者を捜す瀬谷警察署の看板が花束とともに立てられました。

 現場を歩くと、道路をはさみ住宅街で、集団で下校する小学生の列にも出会いました。目の前で事故を目撃した自動車会社の関係者は「タイヤは音もなく飛んできた。タイヤのホイールにブレーキドラムがくっ付いていたのを見た」といい、被害者については口をつぐみました。

事故当日に

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タイヤ直撃事故の現場周辺は住宅街で、小学生が集団下校していました=横浜市瀬谷区下瀬谷3丁目

 事故は県警などの調べで、ブレーキドラムごと外れていたと報じられました。「もし、原因が車の構造上の欠陥なら、別の車でも同じような事故を起こす可能性がある」と疑問が膨らみました。横浜市の事故と同じ悲劇をもたらすような危険がどこにでも潜んでいると…。

 東京都港区の三菱自動車工業本社広報部に取材すると「事故車を見てませんので、百パーセント同様かどうか分かりませんが」といいながら、「同型のトラクターで、タイヤが外れた事例が過去に二件ある」と明かします。「二〇〇〇年二月と二〇〇一年九月に発生しており、福井県内の販売店から十日に報告があった。詳細は確認しているが人身事故には至っていない」という説明です。

 二件の事例は、いずれも北陸三菱ふそう自動車販売(石川・金沢)の管轄で起きていました。

 同社がメーカー本社に事故の報告をしたのは、横浜市で事故が起きた当日十日だったといいます。横浜市での事故がきっかけで、慌てて報告したのか、絶妙なタイミングです。

 同社に取材を申し込んで二日目。同社の担当者がやっとつかまりました。驚いたことに横浜市の事故の四日前今月六日、福井県内で同じ事故が発生していました。

 同社は、「一月六日に、同様の事故があった。過去二件の事例は整備不良ということで報告はしなかったが、同じユーザーで三件目の事故が起きたので九日になってメーカーに報告した」ことを明らかにしました。

 タイヤの脱落事故があちこちで起きていたのです。本紙は、これらの事実を一面で連打しました。

一斉に報道

 こうしたなかで二十二日、一般紙も後追いで報道、国土交通省のリコール対策室にマスコミが殺到。同日のテレビ、夕刊などが一斉に報じました。

 国土交通省は「過去の事例をまとめた報告」を求めるとともに、「走っている車の不安をなくさないといけない」として、同種事故の再発防止を優先させることから、車両点検を指示しました。

 同日、メーカーの三菱自工は、一万九千台の同型トレーラーけん引車をはじめ、同じ部品を使用している、十二万四千台について無償点検を行うことを発表。この過程でまたもや驚くべき事実が出てきました。同様のタイヤ脱落事故が、トレーラーけん引車にとどまらず大型車ダンプ、観光バス、トラックに至るまで二十三件発生していたというのです。

 横浜市で起きた事故の悲劇が、いつ、どこで起きるのか分からない事態だったともいえます。

 車社会日本。安全な車を追求するキャンペーンの重大性を痛感します。


「複合的」と国土交通省

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 タイヤが、ブレーキドラムごと外れていたという横浜市の事故をはじめとした一連の事故について、国土交通省は考えられる原因について(1)タイヤ交換時のボルト締め付けのゆるみ(2)過積載(3)構造上の問題をあげ「複合的に絡んでいる」との見方をしています。

部品の強度不足では…

 岩手県で自動車整備歴三十年の男性(49)の話
 外れた部品を見れば原因がすぐ分かるはずだ。同車種の事故が続いているのは偶然とは思えない。運転手がタイヤ交換する際にブレーキドラムは外さない。タイヤをとめるボルトがゆるんで折れたり、ホイールにひびが入ることはよくある。通常ドラム関連の部位に問題があれば、運転手はすぐ分かるはずだ。車検(一年)まぎわまで長期間、異常に気づかず走ることなどできない。部品の強度不足が原因ではないのか。

 


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