日本共産党

2002年1月15日(火)「しんぶん赤旗」

東アジア共同体を提唱

シンガポールで小泉首相演説

米の関与は“不可欠”


 東南アジア諸国連合(ASEAN)五カ国を歴訪中の小泉純一郎首相は十四日、最後の訪問国シンガポールで政策演説を行いました。

 そのなかで、経済分野などでの連携強化のため、ASEANと日中韓三国のほか、オーストラリア、ニュージーランドも加えた東アジアにおける新たなコミュニティー(共同体)の構築を提唱。

 同時に「安全保障への貢献や経済相互依存関係の大きさにかんがみれば、米国の役割は必要不可欠だ」として、日米同盟のいっそうの強化を強調しました。

 首相は「『安定』のための協力の継続と強化」を打ち出し、「日本はPKO(国連平和維持活動)などの国際社会に対する義務を果たすようになった」として、自衛隊海外派兵の実績を強調。また、「東南アジアにおいても、地域の安定確保のためにいっそう積極的な貢献を行うつもりだ」とのべ、この地域でも自衛隊派兵をふくむ「貢献」を行うと表明しました。

 また首相は「『構造改革』を進め、日本経済の力強さを呼び戻すことは、ASEAN諸国も望んでいる」として、「一九九〇年代に日本経済が停滞した理由は、成功のために慢心し、政治と経済の構造の改革という対応を怠ったことだ」と決めつけて、「『改革』には痛みが伴うが、持続的繁栄はその痛みを乗り越えたところにある」と「構造改革」の推進を改めて強調しました。


「信頼」いうが侵略にふれず

 小泉首相の東南アジア諸国連合(ASEAN)五カ国訪問には、日本の「アジア重視」の姿勢を印象付ける狙いがありました。しかし、歴訪で提唱した「東アジア共同体」構想をめぐっては、「米国の役割は、必要不可欠」だと米国の関与を強調。訪問先で、歴史教科書問題や従軍慰安婦問題、靖国神社参拝をめぐる首相の歴史認識を問う市民の抗議の声があがりましたが、最後の訪問国シンガポールでの政策演説では、「平和、理解、信頼」といいながら、日本軍国主義のアジア諸国への侵略戦争についていっさいふれませんでした。

 政策演説で首相は、「東アジアにおける新たなコミュニティー(共同体)の構築」を打ち出しました。しかし、日本政府が従来から掲げる「アジアの一員」であることの押し出しよりも、「米国との同盟関係の強化」を「特に」と強調したものとなりました。

 就任以来「根っからの親米派」を自認し、「『日本はもっと(米国から)自立すべきだ』と言う人もいるが、そういうことはあり得ない」と言ってはばからない首相には、東アジア共同体の提案も「米国の関与」なしには成り立たないということです。

 アジア外交の基本は、日本の過去の侵略と植民地支配に対する真摯(しんし)な反省と謝罪にあります。

 今回の歴訪はもともと昨年九月、日本のアジア侵略を“正しい戦争だった”などとする歴史教科書の採択問題、首相の靖国神社参拝で、中国、韓国との関係が悪化するなかで、「アジア重視」の姿勢を印象付けようと打ち出されました。米国の同時多発テロ事件で延期されていたものでした。

 その後、韓国、中国との首脳会談は実現したものの、「両国との関係は教科書問題だけではない」と開き直る首相の姿勢は、かつて日本の侵略と植民地支配をうけたアジア諸国の国民にとって、引き続き大きな懸念となっています。首相は政策演説でASEANとの「率直なパートナーシップ」を掲げましたが、アジアの歴史をめぐる根本問題をあいまいにしたままで、真の平和、友好関係の構築はほど遠いものであると言わざるをえません。(山崎伸治記者)

 


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