日本共産党

2002年1月15日(火)「しんぶん赤旗」

負けてたまるか リストラの職場で

村田機械

「希望退職」断った労働者に

無期限出向命ず


 都大路を華麗に走る全国女子駅伝で地元勢が優勝してわいた京都で、駅伝を協賛する繊維機械・OA機器メーカーの村田機械は、希望退職を断った労働者に無期限の出向を命令し、十五日に愛知県に単身赴任せよと迫っています。大問題となった“座敷ろう”や“独房”と名づけられた人権侵害の「隔離部屋」が解決した矢先、こんどは定年までの“島流し”―。(名越正治記者)

 事件は、初出勤日の翌八日に始まりました。午後、上司が希望退職に応じなかった八人を一人ひとり呼び出し、「みんな犬山工場(愛知県犬山市)へいってもらうからな」と通告しました。

 ぎょっと目をむく労働者たち。昨年十一月末で終了したはずの希望退職募集に名を借りた労働者いじめの復活です。

 希望退職は、米国系の大手リストラ支援コンサルタント会社「日本DBM」を使い、退職をさせたい労働者をあらかじめ決めたら辞めるまで迫るやり方でした。当初の三百人の募集人員に四百人が応募し、職場を去っていきました。

 八人も五回も六回も呼び出され、「希望退職に応じろ」と執ように退職強要を受けてきました。

 それでも、「辞めません」といって屈しない労働者に、会社は子会社への転籍を迫りました。

 労働者たちは村田機械労働組合(連合・JAM加盟)に訴え、組合が動いて転籍を取り消しましたが、今度は出向しろと命令したものです。

 しかも遠隔地・期限なしの出向命令です。会社は八日に妻帯者四人に、十日には単身者四人に「十五日午前に子会社の犬山MCCに出向せよ」と辞令を出しました。

 周りの職制からも「えげつないことをしよる」「有無をいわせないやり方はひどすぎる」との声があがっています。

病気の母を抱えているのに…

いつ帰してくれるのか

 京都商工会議所会頭という要職も務める村田機械の村田純一社長は七日の年頭あいさつで、「二十一世紀は精神的な豊かさを満たす生活の質を高めることが大切になってくる」とのべる一方で、「危機的な状況を脱却するために、若い人を中心に組織を再編したい」といい、長年会社に尽くしてきた中高年労働者を追い出すことをあけすけに語っています。

人員削減を強行

 八人が送り込まれようとしている犬山工場は昨年、百六十人余の人員削減を強行。工場内につくった出向先の子会社、犬山MCCは、溶接や部品の塗装を取り扱う会社です。

 会社が遠隔地・期限なし出向を命じた労働者のなかには、長期間治療が必要な子どもをかかえた労働者や、病身の母親を介護しなくてはならない単身者もいます。

 Aさん(53)もその一人です。八十三歳になる母親は一人で散歩するのも大変なため、現在は他県の姉夫婦に一時的に預かってもらっています。

 Aさん自身、出向から出向へ違法なたらい回しをされてすでに十年になります。今回の出向命令に、「母の介護と、最近購入したばかりのマンションのローンや維持費などをどうするか」と随分思い悩みました。

 そして、やむにやまれず上司に「病気がちの母親をみなくてはなりません。赴任はしますけど、いつ帰してくれるのですか」と聞きました。

 上司は「出向の期限はない。会社が大変なときだけにがんばってもらうしかない。京都の職場に空きが出て、君が犬山でよく仕事をやってくれたら、帰れることもある」という返答でした。

 二重生活による持ち出しが増えるのも心配です。妻帯者は月に二回、帰省の費用がでますが、単身者にはありません。

細部の労資合意なし

 「母の介護で帰ったらすべて自分持ちやし。二重生活でマンションの共益費や水道光熱費だけでも月二万円もの出費になる」とAさん。

 上司は「空き家になるなら、人に貸したらどうや」と突っぱねました。

 出向は、就業規則などで出向先会社や出向期間、出向先の労働条件、出向元への復帰という基本的な項目を明確にしなければ労働者を出向させることができません。

 村田機械の場合はこうした細部までの労資合意はなく、一般的な協定のみで「本人の同意」が前提です。これを無視して不利益な取り扱いをすれば権利の乱用になり、出向は無効です。

 職場で活動する日本共産党村田機械支部は、労働者を訪問し、一人ひとりの権利を守るために対話や懇談をしています。

 「退職強要を受けている人は京都労働局に申し出よう」とよびかけるとともに、出向に反対しながらも、やむをえず犬山へ赴任する労働者の待遇改善と、「一日も早く京都の職場へ戻せ」と会社に強く要求し、団結の輪を広げています。

     ◇

 抗議先=村田機械・村田純一社長 京都市伏見区竹田向代町一三六 電話075(672)8111

 激励先=日本共産党村田機械支部 京都市下京区夷馬場町一の一、日本共産党南地区委員会気付 電話075(371)9164 ファクス075(371)0959

企業の社会的責任追及する

 京都総評の河内一郎議長の話 村田機械の労働者いじめの実態は、単なる退職・転籍強要にとどまらず、明らかな人権侵害です。かつての思想・賃金差別争議の教訓も踏みにじるもので、到底許されない。

 京都商工会議所会頭をはじめ、数多くの要職に就く村田社長の見識が疑われます。一連の事態に対し、京都総評は働く仲間の雇用と権利を守るため、企業の社会的責任を追及し、できる限りの支援をしていきたい。

 また、知事選で一部地元財界幹部が自分たちの意のままに動かせる府政づくりに向けて策動していますが、これらの動きを許さず、労働運動の面でも京都から新しい流れをつくっていきたい。

 


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