日本共産党

2002年01月01日(火)「しんぶん赤旗」

「高い公共事業」のゆ着の構造明らかに

会計検査院・国土交通省

天下り先が単価調査を独占

実勢の1.5倍もノーチェック


 公共工事の予定価格を積算するもとになっている材料単価の調査が、二つの財団法人に独占的に委託され、実際の取引価格よりかなり割高な単価がそのまま採用されていることが本紙の調べでわかりました。両財団には会計検査院OBがそろって天下りし、会計検査では両財団の調べた材料単価はノーチェック。予定価格の信ぴょう性が根本から問われるとともに、アメリカより三割高いといわれる日本の公共工事費のカラクリの一端が明らかになりました。

 国や地方自治体、公団から材料単価の調査委託を独占してうけていたのは、財団法人・経済調査会(東京・中央区、山口甚郎理事長)と財団法人・建設物価調査会(東京・中央区、田口二朗理事長)。国土交通省などが管轄する公益法人です。

 国土交通省や農水省、日本道路公団、東京都(建設局)など本紙が調べた限り、例外なく全官公庁が二つの財団のいずれかに材料単価の調査を委託。両財団の調べた材料単価は、一部を除きほとんどが同じ価格となっています。

 材料単価は本紙が入手したゼネコンの購入単価表とくらべても高さが目立ちます。とくに、第二東名・名神高速道路をはじめ全国の橋りょう工事で使われている「ゴム製支承」と呼ばれる建設資材は実際の取引価格より一・五倍も材料単価が高いと問題になっています。これは、橋げたと橋脚を連結するもので、阪神大震災後、耐震性の面から急速に使用が広がりました。

 複数のゼネコン関係者によると、第二東名・名神高速道路での「ゴム製支承」をゼネコンがメーカーから購入する価格は、メーカー希望販売価格の50%台から60%前後。ところが、財団法人の調査した材料単価はメーカー希望販売価格の約90%。「ゴム製支承」は一個数百万円から数千万円と高額で、一工事に数十個単位で使用するため、ゼネコンには一工事で数億円の「差益」が入っていた、と証言します。

 両財団の監事には、会計検査院の元事務総長官房審議官がそろって就任。両財団が第三者によるチェック機関としてそれぞれ設置している「審査委員会」の委員長もともに会計検査院OB、さらに両財団の理事長は旧建設省OBです。

 国土交通省で公共工事を担当している職員は「材料単価の調査では両財団を使うように“指導”されている。それを使っている限り、実際の価格より高くても会計検査院は何もいわない。国土交通省、会計検査院、財団による完全な癒着だ」と話しています。


公共事業費つり上げる

ずさん"調査"財団

単価上げへ接待、公告 材料メーカー

「差益」確保で大もうけ ゼネコン

 ふたつの財団法人が独占している公共工事の材料単価調査では、高い単価を設定したい材料メーカーなどからの広告掲載や接待などさまざまな働きかけが直接、間接に財団職員にたいしておこなわれています。公共工事の予定価格の積算に使う材料単価が正しいかどうかは公共事業の根幹にかかわる問題。その実態は――。

 材料単価調査を委託されていた「経済調査会」と「建設物価調査会」の二つの財団法人は、材料単価を載せた刊行物をそれぞれ発行しています。ここには、材料メーカーの広告がほとんどのページに掲載されています。

 「これが財団にたいするメーカー側の働きかけのひとつ」とある財団職員は語ります。

 「材料単価の調査では、実際の取引価格をつかまなくてはならないが、実際には人手もなく、メーカーに聞くだけになることが多い。メーカーは、ゼネコンに買いたたかれるので高めの価格をいってくる。私たちの刊行物に広告を出している場合は、『掲載希望価格』をいってくることも多い」

 広告だけでなく、直接の接待攻勢も――。

 「接待を受けないようにいわれているが、ゴルフや飲食の接待もある。一円でも材料単価が上がれば、億単位で売り上げが違ってくることもあるから業者も必死だ」と前出の財団職員はいいます。

 一方、ゼネコン関係者は材料単価の調査について「ウソの回答をしている」と告白します。

 「正直にいえば私たちが材料単価より安く買って、『差益』をもうけていることがばれる。サッシなんかは『半値八掛け』とまではいかないが、実際の購入単価は材料単価の五割前後だ」

 本紙が入手したゼネコンの購入単価表。ゼネコンが材料をいくらで購入したかを記したものですが、二財団が調査した材料単価と比べると材料単価の高さが目に付きます。先のゼネコン関係者は「なかでも高いのは道路工事など土木工事に使う材料単価だ。しかも大手ゼネコンは大量に使うから差益が大きい。もうかっている」と説明します。

 材料単価が実際の取引価格より高くても、会計検査院は同院の元幹部が天下りしている財団法人の調査をチェックしません。それどころか経済調査会は会計検査院OBの執筆した本を出版したり、数年前までは現職の会計検査院職員による講習会まで開催。「会計検査」対策を売り物にしていました。

 先の財団職員はいいます。

 「材料単価の調査は税金の支出にかかわるだけに、公正・中立が求められる。天下りや広告などは問題外だ。本当の取引価格を調べるなら、ゼネコンやメーカーの契約書類を確認すればできるはずだ」

 


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